皆さんこんにちは喜創産業山本将司です。
今回はYouTubeでリクエストを頂いておりました、RIZAPについてお話しします。
RIZAPは今までにたくさんのM&Aをしましたがうまく機能できず、前期決算で巨額の赤字を出しました。
今期は立て直しますと瀬戸社長は言われていました。
しかし今年の9月末の決算短信では6600万円の赤字とニュースで報道されており、今期これからどうなるのかということと、M&A戦略のメリット・デメリットについて解説します。
①9月末で6600万円の赤字 を本質的に立て直せているのか?
M & A の妙味は赤字企業を買って黒字化させて儲けることにもあります。
RIZAPはそこを体現できる会社です。
ですが意外なところに落とし穴があります。
今回は気をつけないといけないポイントを解説します。
まず赤字で6600万円のチェックポイント
一番大事なところは本業でどれだけ稼いでいるかです。
今回の決算短信で6600万円の赤字がどこを指しているかというと親会社の所有に帰属する四半期損失の部分です。
ここは一般にはわかりにくい部分だと思います。
しかし、1番ごまかせない部分は現預金の動きです。
そのためキャッシュフロー計算書を見ていくのが1番いいです。
この会社の営業活動によるキャッシュフローは50億円あります。
6600万円の赤字と言っても、本業では利益(日本会計基準の営業利益)は出ています。
傘下にある会社を売って損したという本業以外の一過性の特別損失により赤字計上になっています。
銀行員も一過性の部分は考慮しません。
長期債務償還年数を計算する時には一過性の損失部分は計算に含みません。
今回この会社は会計処理の変更を行いました。
日本会計基準から国際会計基準へ変更しています。
今までリース資産(お金を借りてリース物件を起こす)を持っていました。
中小企業の社長さんはこの話よく分かると思います。
例えば車を買うときにリースで買うとなると車の資産と負債は簿外(会計)の外に計上していました。
RIZAPは今回から基準を変えて両方を簿内に入れて財務諸表に載せるようにしました。
この変更で固定資産が増えたことにより、長期債務が増えました。
RIZAPの去年の固定資産は553億8500万円で自己資本は547億3700万円でした。
そのため、去年の時点で実質長期債務ほぼありませんでした。
今回資産と負債の両方を計上していますので資産が1010億9900万円、約1000億円あることになります。
それに比べて自己資本は減っています。
純資産が9月時点で408億7000万円なので、実質長期債務は602億2900万円になります。
固定資産(101,099)ー純資産(40,870)=602億2900万円
では、この実質長期債務をいつまでに返済できるのか。
この会社は今まで簿外で借りてリース物件を買っていました。
ですが貸借対照表に載るということは、経費で計上していたるものが利益として上がってくるようになります。
今回この会社の大きく変わったところは営業利益が増えたところです。
具体的な増えた部分ですと減価償却に値します。
当然資産に上がってきますので今まで経費として外に出していたものが減価償却として計上されます。
去年の減価償却費が26億2200万円でしたが今期の決算短信では71億4900万円まで増加しています。
そのため実質長期債務は税引前の利益と減価償却を足します。
税引前利益(13億7800万円)+減価償却(71億4900万円)=85億2700万円
85億2700万円のキャッシュフローを有していることになります。
そこから実質長期債務(602億2900万円)を85億2700万円のキャッシュフローで割ると
602億2900万円÷85億2700万円=7.06(年)になりますので
半年間ベースで見ても7年はかかります。
1年に引き直すとこの会社は3年くらいで長期債務を返済してしまうのではないかと見ていますので今のところ成果が出ていることになります。
②銀行員目線で決算書をどのように見るのか
RIZAPは色々な事業をしていますのでどこが大きく変わったのかを銀行員の目線で見ることが大事になります。
実際にどこを見ていくかと言いますとRIZAPの場合はセグメント別の売上と利益がどう変化したかを見ていくことが1番いいと思います。
RIZAPグループは主に3つの事業をしています。
1 結果にコミットする美容・ヘルスケア部門
2 アパレルや雑貨などを販売しているライフスタイル部門
3 プラットフォーム事業
プラットフォーム事業が売上の比率が1番大きいです。
プラットフォーム事業は主にエンターテイメント商品の企画販売やリユース事業をしています。
その他にもフリーペーパーの編集や発行など主に「コト」を売る仕事をしています。
去年の時点でRIZAPはプラットフォーム事業で苦戦していました。
売上は440億円ほどありましたので去年の時点でまだ利益はありました。
ですが、40億円もの赤字がありました。
今期はプラットフォーム事業の部分のスリム化を図っています。
今年のプラットフォーム事業の売上は40億円ほど減少しています。
しかし、こちらは黒字化に成功し利益が13億1300万円あります。
そのためRIZAPは本質的な体質は良化していると思います。
理由としてM&Aで買収した(赤字企業)企業をぶら下げていましたがその中で機能していない会社もありました。
その会社をうまく切り離すことによって本質的な部分で儲けることができるようになってくると思います。
③今後の見通し
今後決算までに黒字を出さないと瀬戸社長は辞めると公言しています。
本当に辞めてしまうかどうかが今後の見通しになります。
もう1つ気になったニュースでRIZAPのプラットフォーム事業にぶら下がっている会社に「ぱど」という上場子会社があります。
この会社がフリーペーパーなどを発行している事業となります。
上場子会社の中でぱどは赤字企業、その他の会社は全て黒字企業です。
そのため、ぱどは今年の年末に売却する予定になっています。
売却見込みは10億円になりますので順調にいけば最終黒字を確保できると思いますので瀬戸さんは辞任しなくてすむのではないかと私は考えております。
④赤字企業のM&Aメリット・デメリット
RIZAPは赤字企業を買収しレバレッジを効かせています。
80社以上買収していますがこの80社には共通項があります。
RIZAPの仕事はどこをとっても莫大な広告宣伝費をかけています。
一社の一つの商材の広告宣伝費をかけるのであれば「自己投資」というキーワードの枠の中で色々な会社をぶらさげています。
そうすることで相乗効果を見通し、M&Aを繰り返していることになります。
あれもこれもと闇雲にM&Aをしているわけでは無いんですね。
先程のぱどの件もそうですが赤字企業を買うメリットは主に2つあります。
(1)割安感がある
報道でもあったように負ののれんがあります。
例えば、1億円の企業価値がある会社を7000万円でRIZAPは買っています。
残りの3000万円は利益は上がっていないけどお買い得感があるということで利益として計上したことになります。
そのため赤字企業を買うことは買い手がいないぶん割安感があります。
(2)振り幅が大きい
今回のぱどもそうですが10億円もの売却益を見込めるということはすごく儲かるということになります。
会社を買って再生させて売るだけで儲かりますがこれができる人はなかなかいないです。
ファンドがすごく儲かるのはこれが原因です。
ですがRIZAPのように短期間でたくさんの会社を買うとコントロールが効かなくなります。
会社は生き物なので取引先もあればお客さんも従業員もいて成り立っているものなので管理者不在になると売上も低下し、赤字になります。
赤字企業を買うときには経営能力がなければうまくいきません。
ある程度の出口戦略がないと買ってはいけないです。
ちゃんと経営ができる人は黒字の会社は高いので赤字企業を買って振り幅を大きくした方がより成長させることができると思います。