大塚家具売上激減で資金ショートか 元銀行員が決算短信を元にニュース解説 今後の取り組みについて

 
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喜創産業山本将司です。

先日ダイヤモンド・オンラインにて大塚家具さんが来年の3月に手元資金が枯渇するのではないか?というニュースが取り上げられていました。

YouTubeのコメントに大塚家具大丈夫ですか?とコメントが来ていましたので今回は大塚家具についてお話しします。

大きく4つにわけて説明します。

Contents

①大塚家具は資金ショートするのか?するとすればいつ頃になるのか

マスコミでは1か月に5億円ぐらいのキャッシュアウトをすると報道されています。

大塚家具は12月決算なので(※今期から決算月が変更になったため、2020年3月期になりました)6ヶ月経過した時点で決算短信が出ます。

決算短信の中のキャッシュフロー計算書を見ると営業活動によるキャッシュフローが29億円もマイナスになっています。

6ヶ月間で約30億円ぐらいになりますので、単純計算して5億円の現金が流出していることになります。

6月にに中国の会社とファンドを組んで増資を受けています。

9月の決算短信では現金を確保できたので影響がないように見えますが1ヶ月で仮に5億円出ていったと考えた時に大塚家具の9月末のこの会社の現預金が21億9000万円あります。

そこから1ヶ月に5億円ずつ出ていくと大体4ヶ月分くらいになります。

このままで行くと20億円になりますので資金が4ヶ月しかもたないと思います。

②銀行員の目線でどのように考えるか。今後融資ができるのかどうか

 

資金が枯渇すると銀行の融資を調達しないといけなくなります。

実際に銀行員が大塚家具の決算書をどのように分類して対策をするのかを説明します。

まず、2019年の9月30日時点の第3四半期の決算短信を見ます。

この会社は長期債務があるかないかで区別すると現時点ではないです。

大塚家具さんの固定資産は53億7000万円、純資産の合計が123億円です。

この会社は固定資産の倍ぐらい純資産を持ってると表向きでは見えます。

ですが、大塚家具の難しい問題点に在庫があります。

9月末の決算短信時点で88億円もの在庫が残っています。

会社がどのような構造になるのかと言いますと、

純資産(12,349,885)ー固定資産(5,377,453)=6,972,432(69億7243万2千)

この会社の自己資本のうちの70億円の部分が商品に充当されています。

この商品を不良在庫と考えた時には純資産を減算するため、長期債務が発生します。

(※高級商材を扱うのであればフェラーリのように受注生産でも良いのでは?、売上高から考えて、在庫が多すぎないか?などと銀行は考えます)

長期債務を返せるかどうかの足元の収益はというと、全くない状況です。

実質長期債務はない会社ですが、3期連続で赤字を出しています。

そのためこの会社は要注意先と判断されます。

会社の決算書を見てみますと第2四半期6月30日時点で13億円ほど短期資金を融資していました。

ですが、9月末ではその短期借入金13億円が長期借入金8億円に振り替わっていました。

家具を仕入れて販売し、仕入れた商品が売れたときにその資金で返済をすることを想定して、毎月の返済がない、短期資金で銀行は対応していました。

ですが8億円の長期債務に切り替わっている(毎月返済)ということは商品の不良在庫が多いというように銀行が見ているからです。

その代わりに8億円を融資しますから収益の中から返済してくださいということになります。

これを専門用語で資本構成の是正と言います。

毎月の返済ができることによって銀行もリスクが減ります。

13億円あったものが8億円の長期資金に振り替えることにより5億円を回収したことになります。

今後、この会社は資金調達することが困難になると思います。

大塚家具が今年の年頭に事業計画書を作っています。

この事業計画書と足元の決算短信を見比べて大塚家具さんの財務の強み弱みと事業の実現可能性があるのかないのかを解説します。

大塚家具の財務的な弱みは資本効率が悪いことです。

投下した資本に対してどのくらいのスパンで回収できるかの目安があります。

これを総資産回転率といいます。

9月末の決算短信の売上、210億3000万円を総資産で割ります。

総資産は196億9700万円になので計算すると総資産回転率は1.07倍になります。

(21,003,927÷19,697,300≒1.07)

1.07倍の数字は製造業などに多いです。

※製造業は工場や機械設備などを所有する必要があるため、どうしても資産が大きくなります。

小売卸売業は大体2回転ぐらいしないといけないんです。

投下した資本が1回転しかしないということは資本効率が悪いです。

今期の決算と前期と比べて努力はしていると思われます。

その努力が感じられるのは売上原価で前期の売上原価が56.3%に対して今期は48.9%で7%も改善しています。

また、特筆すべきところは人員の削減(リストラ)で

大塚家具は元々従業員が1700人いましたが現時点で従業員は1200人と500人程度のリストラをしています。

2018年9月末と2019年9月末の販管費の比較をすると30億円ほど圧縮しています。

しかし、粗利が100億円に対して販管費が136億円かかっています。

経費は事業計画どおりに推移しておりますが、売上が追いついていません。

そのため努力をしていてもなかなか結果に結びついていないことがわかります。

③事業計画の実現性は?

計画の実現性ですが2つの意味で実現の可能性が難しいと思います。

1点目に今年の2月に中国のファンド、ハイラインズから38億円の出資を受ける話がありました。

6月に払込が行われましたが、土壇場になって中国当局の許可が得られなかったので26億円止まりで終わりました。

私も仲介業者なので思うことがあるのですが、上場企業が土壇場になって失敗するとなると、なぜ裏がとれてないのかと思います。

相手が中国だけに裏をとってもとれきれないくらい情報を密にとっておかないといけない案件だと思いますが、土壇場になって資本が起こせなかったということは今の実力はここまでなのかなと考えてしまいます。

2点目の理由として大塚家具のブランドを中国で浸透させるにはものすごく時間がかかると思います。

日本の商品で中国で売れているブランド力が大きいのは化粧品が多いです。

大塚家具のブランドを認知させたうえで中国の人たちに買ってもらうことはすごく時間がかかると思います。

日本で有名だからという理由だけでは通用しないと思います。

また、売上の半分以上が輸入家具であるため、日本の会社から日本製ではない物をわざわざ買う必要があるのかという考えもあると思います。

1年でこれだけの計画を実現できることは日本の会社の中国進出支援を行っている、私の今までの経験上だと非常に難しいです。

④今後の見通しと取り組みについて(私目線で考えます)

(1)まず片付けていかないといけないところは在庫の現金化です。

商品在庫が80億円も残っていますのでいかに早く現金に換えていくかが大事です。

そのためには一定のクリアランスをしていく必要があります。

(2)店舗の統廃合

わたしが行うのであれば東京一極にしてもいいのかなと思います。

今以上にリストラをします。

富裕層は地方にいますが地方の富裕層のためにお店を展開するのは非常に効率が悪いです。

こちらがお金を払って東京の大塚家具のお店に招待するぐらいの気迫でしないといけません。

その代わりにその店舗は全部廃止する方が効率がいいと思います。

(3)EC事業の強化

この計画書にネット販売に力を入れると書いてあります。

家具は商売でいう、あったらいいなという分野です。

商売はなくてはならないところにどれだけ肉薄できるかが大事です。

今回の場合、家具は今の時代なかなか売れないので、潰れていく家具メーカーさんも少なくありません。

大塚家具の強みはブランド力です。

いい家具を売る販売力はあると思います。あとはネットを通じて輸送の問題を解決できればアスクルモデルが作れると思います。

(4)アスクルモデルの構築

アスクルモデルとは地域の文房具屋さんが文具を売ろうと思っていてもなかなかうまく売れない悩みを抱えていて、アスクルの文房具を置く代わりに売れた商品の何%はくださいねというモデルを構築していることです。

いずれにしてもここ半年または1年の中で資金が枯渇していくところは今の段階で行くと可能性が高いとまでは言えないですが新しい手を打たないと難しいと思います。

何らかの資本政策が必要になると思います。

大塚家具のような会社は銀行融資の政策判断の中でいう救済処置に該当するか?当てはまるかはまらないかで言うと当てはまらない会社になります。

理由としては、IKEAやニトリもありますのでその中で大塚家具が社会にとってないといけないとは今の段階で言うことは難しいと思います。

そのため、救済処置に当てはまらないと思います。

両手を空に上げて 「オラに現金をわけてくれ!!」 これくらいの気概で投資家たちへ訴えていかなければならないと思います。

今後、金融検査マニュアルが廃止されるため、大企業は資金調達が難しくなってきます。

次回、金融マニュアルが廃止になるお話をさせてもらおうと思いますが、廃止になることで日本中の銀行は大企業というよりは中小企業の方に資金があたっていく構図ができると思います。

大企業は資金が調達しにくい中でましてや3期連続赤字の会社に融資を行うことは難しいと考えられます。

この半年間の間に事業計画が実現できるのかと言うことと、資金の手当をこの会社がどのようにしていくかを注目して見ていきたいと思います。

いつもYou Tubeをご覧頂きありがとうございます。

今後もこの会社の解説が聞きたいなどのリクエストがございましたら、コメント頂けますと嬉しいです。

次回はRIZAPについてお話します。

RIZAPについてどう思いますか?とコメントがありましたが、RIZAPは80社以上M&Aをされています。

この会社の強みと弱みをお話すると中小企業のM&Aでも活かせる題材になると思いますのでいい参考になると思います。

 
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