利益率を増やす経営改革 人件費カットだけが経営改善ではない 【カルビー】

 
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みなさんこんにちは

喜創産業山本将司です。

今回は「粗利をどのように考え、構築していくか・利益体質の組み立て方作り方」

カルビーの例を参考にお話していきます。

カルビーは「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」など子供からお年寄りまで世代を超えて愛されるお菓子を作っていますよね。

2019年時点でポテトチップスの国内シェアは70%、売上高営業利益率も10%を超える日本の優良食品メーカーです。

カルビーは2010年代後半からは日本の食品業界の模範とされてきました。

しかし、今から10年ほど前の2009年時点では、大きな問題を抱えていて、ポテトチップスの国内シェアは60%を確保していたものの、売上高営業利益率は3.2%と今では考えられない数字だったんですね。

シェアが高くて売れているのに儲かっていない会社でした。

そんな会社が10年でどうやって儲かる会社になっていったのでしょうか。

今回は設備の効果、回収が思ったようにいかなかった時にどのように対処していくのがいいのかと言うことをカルビーの例を参考にしながら皆さんと勉強していきたいと思います。

カルビーの歴史

そもそもカルビーは終戦直後の1949年に松尾孝氏が「水飴」や「キャラメル」などのお菓子を広島で販売したことから始まっています。

当時、日本人に不足しがちなカルシウムのカルとビタミンのビーを合わせたのが社名の由来みたいです。

当初は小さなお菓子メーカーで、これといった商品もなかったので、何度も倒産しそうになったみたいですね。

そんな状況を劇的に変化させたのが、1964年に発売した「かっぱえびせん」なんですね。

地元瀬戸内海で獲れる「えび」からヒントを得て、冷凍したえびの粉末と小麦粉を練り合わせたスナック菓子を発売したところ、大ヒットになりました。

当時はえびを急速冷凍する設備を持っている会社が少なかったので、カルビーが独占していました。

私も小さい頃によくかっぱえびせんを食べていて、こんな人気商品を広島の会社が作っていると知って、感動したのを今でも覚えております。

「かっぱえびせん」で勢いに乗ったカルビーはその後、社運をかけて「ポテトチップス」に参入します。

ポテトチップスを作るにはもちろん大量のじゃがいもが必要になるので、じゃがいもの貯蔵庫を北海道に相次いで新設して、農家からじゃがいもを調達できる体制を作ります。

しかし、当初は全然売れませんでした。

今からだと想像できないですよね。

なんで売れなかったかというと、ライバル湖池屋の存在でした。

湖池屋はカルビーがポテトチップスを発売する10年以上前からポテトチップスを発売していて、知名度で圧倒的な差がありました。

知名度の他にカルビーは品質面で劣っていました。当時は今のような食品包装技術がなくて、ポテトチップスを加工してからすぐに販売しないと酸化によってポテトチップスが劣化する問題がありました。

湖池屋は知名度を生かして作ってから販売するまでの時間を短くするなど先行者としてのノウハウを持っていたんだと思います。

カルビーは鮮度の良いポテトチップスを安定的に供給するために、販売先に近いところで生産しようということで、全国各地にポテトチップスの製造拠点を新設して、じゃがいもを加工してからすぐにスーパーなどの店頭に並べる物流体制を作っていきました。

そして、湖池屋からシェアを奪っていくために大幅な値下げに挑戦します。

当時、湖池屋のポテトチップスが150円だったのに対して、カルビーは100円で販売をしていました。

インパクトに残るCMも打っていって、1991年には国内シェア69%を確保しました。

全国各地に生産拠点を作るという大規模な設備投資を行った結果、それが参入障壁となって、他のお菓子メーカーが参入できないようになったんですね。

ただ、ここから売上は横ばいで、2010年前後には国内シェアも60%を割り込んでいきました。

さらに、2009年3月期の決算では売上高営業利益率3.2%という低い水準になってしまいました。

これまで会社を引っ張っていたのは創業家の松尾家だったんですが、そのまま創業家で経営をしていくと会社がダメになるということで、当時ジョンソンエンドジョンソンの日本法人の社長だった松本晃氏に代表になってもらいました。

ここまでのお話でなんでこんなに売上高営業利益率が低くなったのか皆さんおわかりでしょうか。

今までのお話の中でわかると思うんですが、値下げをしてシェアを取りに行った事による粗利率の低さが原因だったんですね。

松本氏が代表になって初めに行ったことは3.2%という低い売上高営業利益率の原因は何かを突き止める作業です。

なぜなら、ライバル企業の湖池屋の売上高営業利益率は5.1%で、カルビーよりも効率よく稼いでいます。

ですが、その湖池屋でさえ他の国内の食品会社と比較しても低い水準だったんですね。

亀田製菓、ブルボン、江崎グリコは10%を少し切る水準でした。

さらに、ネスレなど外資系の優良企業を見ると、10%を超える水準は当たり前でした。

業界は違えど、外資系でバリバリやっていた松本氏がこの数字を見て驚き、危機感を感じたんですね。

決算解説

では、ここから決算解説になるんですが今回は、カルビーの粗利益率をどのように算出するかを解説します。

まず粗利益なんですが、これは売上総利益とも言ったりします。

要は売上から売上原価、つまりその売るものを作るために必要になったコストを引いたもの(-)になります。

カルビーの場合だと、ポテトチップスを作るために必要なコストというのは、じゃがいもを買ったり、じゃがいもを運んだり、じゃがいもを加工する工場の電気代だったり、工場で働く人の給料だったりします。

売上からそのようなコストを引いたもの(-)が粗利益で、粗利益を売上で割った(÷)ものが粗利益率になります。

せっかくなので、先ほど出てきた売上高営業利益率の話もここで少ししておきます。

営業利益というのは、先ほど説明した粗利益から販売管理費を引いたもの(-)になります。

販売管理費というのは、カルビーの場合だと、営業職員の給料だったり、本社の経費だったり、ポテトチップスという商品を作るための費用ではないけれど、ポテトチップスを売るためのコストや会社として運営していくためのコストということになります。

そういう意味では、営業利益は本業としてどのくらい儲かっているかを見る指標になるんですね。

そして、3.2%という低い値だった売上高営業利益率というのは営業利益を売上高で割ったもの(÷)になります。

ということは、例えばこの時期のカルビーは100万円売り上げて諸々の経費を払ったら3万2000円が残りますよ、ということなんですね。

少し話が脱線しましたが、なぜ儲からない会社になるのか、なぜ原因が粗利益率の低さだったのかという話に戻りたいと思います。

当時のカルビーの粗利益率は35.1%に対して、ライバルの湖池屋の粗利益率は42.4%と7%以上も違うんですね。

つまり、カルビーは湖池屋に比べて一つのポテトチップスを作るために多くのコストがかかっているということになるんですね。

じゃあなぜ、カルビーはコストがかかってしまうのか。

カルビーはじゃがいもを仕入れるコストが高かったというよりも、ポテトチップスを製造するコストが大きかったんですね。

その原因が、先ほどのカルビーの歴史の話に出てきていたんですが、みなさんおわかりですか?

カルビーがポテトチップスの鮮度を維持するために全国各地に工場を建てたという話があったと思うんですが、そこがネックになっていたんですね。

2011年時点でカルビーの国内工場は17ヶ所あったんですが、湖池屋はなんと!3ヶ所だけだったんですね。

昔は食品包装技術が発展していなくて、全国各地に工場があることが有利だったかもしれませんが、10年前はもう包装技術も進歩していて、どこで作っても鮮度はキープできる状態になっていたんですね。

工場が多いということはそれだけコストがかかる。それでも、工場がフル稼働していてどんどん生産して売れている状態が続いているならいいんですが、2009年時点で17工場の稼働率は60%だったんですね。

工場は動かすと必ずかかってくる固定費負担も大きいので、その分のコストが上乗せされて、全体として粗利益率が下がっていったんですね。

さて、皆さんならこのような状況に対してどのように対処しますか?

大きく二つの選択肢があると思うんですが、一つは今の売上に必要な生産を維持するために必要な工場を残して他の工場を閉鎖する。

そうすることで、生産を集中させて不必要な工場のコストをカットする。

そしてもう一つが、カルビーはコレを選択したんですが、工場はそのままで、生産量をあげるということです。

生産量をあげるためにより大きいロットでじゃがいもを買付けすることができるので、じゃがいもの調達コストも下げることができたんですね。

そうして、より低い原価で製造することができたんですね。

しかし、低い原価で大量に生産できても売れなければロスになっていくだけです。

そこで、カルビーは少しの値下げをして湖池屋に奪われていたシェアを奪い返しにいきました。

また、工場の稼働率をポテトチップスだけであげることは難しかったので、新商品を開発していったんですね。

今でもじゃがりこやジャガビーなどポテトチップス以外の商品がよく売れていますよね。

このような方針の転換で、2015年3月期には売上高営業利益率10.9%に、粗利益率は43.9%に上昇して優良企業の水準になったんですね。

2009年の時点で、工場の数を減らしてスリムにして高収益体質を作るという選択肢もあったし、それも間違いではないと思います。

工場閉鎖や人件費削減という固定費の見直しは銀行などが行う経営改善指導の超定番ですが、この戦略を選択していたとしたら、将来再び同じ危機に直面していたと思われます。

カルビーに限らず、業界シェアNo,1の企業を苦しめる最大の敵は「人口減少」です。

高いシェアを維持していても、人口減少により売上は減少し、固定費を回収できなくなります。

そのような状況下で、さらに競合他社のシェアを奪い、原価コスト削減を徹底し、売上を伸ばす選択をして、経営指標の改善をやり切ったカルビーはすごいと思いました。

従業員の平均年収も増加しており、社員にとってもモチベーションの向上につながっていると思います。

ではこのような場合にどのように分析し、どのように対応するのが良いのかと言うのが次のお話になるのですが、、

粗利率向上対策

まず、粗利を上げるためには単価を上げるかコストを下げるかしないといけないことは容易に想像できると思いますが、今回のカルビーのようなコストの下げ方は一定のシェアを取っていないと難しいやり方だと思います。

しかしながら単純に価格をあげようとすると一定の付加価値を必要とします。

そこで経営改善の現場で一番使えるやり方が売上の分散化と小口化です。

ブルーオーシャン戦略で言うところのスライスシェアってやり方なんですね。

実はこの手法はカルビーも使ったことがあるやり方で、一時期じゃがいもの価格が上がった時に価格は据え置いて内容量を少なくしました。

それにより、顧客離れを防いだことがあるんですが、この手法はサービス業なんかでも使ったりします。

例えば美容室でも一時間に4,000円のサービスをやっていたとします。

それをカットだけで10分で1,000円とします。

60分で6人こなしたら,円になりますよね。

これを徹底してやったのがQBハウスですよね。

このように売上は小口分散化していくほうが強いんですね。

なぜだかわかりますか?価格の決め方に問題があるからなんです。

例えば1万円の原価がかかるものに10000円の粗利を乗せて2万円で買ってくれる人を探すのはすごく苦労するのですが、同じ商品を1万円なら絶対買うということがわかっていて、その上で原価を5,000円にどう抑えるかを考えたほうが売上が組み立てやすいからなんです。

前者の考え方を利入主義、後者を値入主義といいます。

値入主義で徹底的に考えて小口多数で売上を組み立てたほうが、最終的にはいい結果を生むことが多いんですね。

冒頭でカルビーは湖池屋のシェアを値入主義で奪ったからある程度の売上が出来て、今回のコストダウンが出来たのですが、通常の中小企業では今回ご案内した方法がやりやすいと思います。

まとめ

それでは今回のまとめになるのですが、

売上とは自分の会社が売ったものの総数ではなくて、お客様が買ってくれたものの総数なんです。

この売上に対する考え方を変えるとどのように粗利を組み立てて言ったら良いか、わかってくると思います。

なぜなら、集客できている自分のお客さんの事情はその会社が一番良くわかっているからなんですね。

赤字で悩んでいる会社はまず、この部分から考えたほうがいいと思います。

そして少数のお客さんから受注もしくは利益を得ていて、その利益が少ないのであれば商材をもう一回考え直して、再度お客さんを集める努力をしないといけないことになります。

自分のお客さんをたくさん掴むことができるようになると、そちらの仕事が

忙しくなるので、今までの受注を引き続き受けるのであれば、相対的に価格交渉が優位に立てるようになるので、最終的には粗利率の向上につながってくると言うのが今回一番伝えたかったことです。

そうは言っても自分のお客さんを自分で掴んで来て小口分散化することは、苦行に近いものです。

コレができないから条件変更している会社の90%くらいが破綻する原因になっているんじゃないかなというのが現場でやっている私の感想です。

今の自分の利益を生み出している仕組みをしっかり理解していれば、きっとできると思います。

このあたりの相談については一定の実績がありますのでお気軽にご相談いただければと思います。

それでは最後まで見て頂いてありがとうございました。チャンネル登録よろしくお願いします。

 

 
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