ソフトバンク メガバンクが融資に難色 着目点は現金収支 元銀行員が決算短信を読み解き、現金の流れについて解説

 
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喜創産業山本将司です。

前回ソフトバンクの動画を上げさせて頂くと8万回も再生されていました!本当にありがとうございます。(記事の公開時にはすでに11万回を超えていました。)

ソフトバンクが資金調達を申込、メガバンクの2行が難色を示しています。

その中でみずほ銀行は融資に対して色々な検討をしているという話があります。

今回はどうしてメガバンク2行が融資に難色を示したかとみずほ銀行が融資を検討しているのかを決算短信を読み解き銀行員目線で解説します。

Contents

銀行の融資判断の1つとして、現金ベース(現金収支)で今までどうだったのか

まずは銀行の融資判断の1つとして、現金ベース(現金収支)で今までどうだったのかが大事になってきます。

こちらを検討する際に1番分かりやすいのはキャッシュフロー(現金の流れ・現金収支)計算書を見ることです。

もちろん決算書を見ることも大事です。

今回はソフトバンクの営業活動キャッシュフローですが、あれほど赤字(直近3ヶ月で)が出ていると言いながらも3700億円ほどキャッシュは増えています。(今回の決算短信は6ヶ月経過分

しかし投資活動によるキャッシュフローは2兆1000億円の赤字です。

この赤字の半分くらいはソフトバンクビジョンファンドに流出しています。

グループ間の間とは言え、この流出が今回のキーワードになってきます。

このままだと支出が収入を上回るので、黒字でもお金は足りなくなります。

現金収支のズレをソフトバンクはどのようにして現金の不足を補ったのか

まずは財務活動によるキャッシュフローをチェックします。

この会社のすごいと思うところは6ヶ月間で約3兆6000億円の借入金を返済しています。

そして新たに約5兆2000億円の借入を行っています。

簡単に言いますと、借り換えをしたということです。

これにより財務活動によるキャッシュフローは2兆1900億円ほど増えています。

しかし銀行融資の半分がビジョンファンドへの投資です。

すでにこれだけの融資金を6ヶ月間で使っているのにWeWorkへの再建資金で再度融資をしてほしいと言われても銀行側もまたですか?という考えになると思います。

1番大きい問題は借りたお金の半分くらいがファンドに投資していたからだと思います。

なぜ、みずほ銀行だけは融資を検討するのか。

それは銀行が融資をする際の与信判断とは別に政策判断も行っているからです。

ソフトバンクは大きな会社なので色々なお取引先があります。

その取引先に対してもみずほ銀行はもちろん融資をしているので、ソフトバンクの融資を断ると取引先にも影響が及びます。

ソフトバンクの従業員の住宅ローンなどの生活の影響を考えながらメインバンクとして対応していけるかの検討をしていると思います。

中小企業も同じように1つの地域で200~300人の雇用を抱えている会社(医療地域を支える病院など)がなくなるとそこへ住んでいる地域の方の生活に支障が及びますし、従業員たちの再就職先やそこで借りている住宅ローンはどのように対処していかないといけないかを議論しないといけません。

今回のソフトバンクの場合そこまでの問題ではないですが、日本の経済に対してはすごく影響の大きな会社なのでみずほ銀行も深刻に考えています。

今後のソフトバンクの流れ

大丈夫か大丈夫じゃないかの判断はどこでするのかと言いますと今年の9月の決算短信を見ます。

ソフトバンクの実質長期債務は会社が本来いくら返さないといけないというものです。

まずソフトバンクの固定資産(非流動資産)は約29兆4000億円あります。

固定資産から会社の自己資本約8兆6000億円引いたものが実質長期債務が約20兆8000億円になりますのでこれが返さないといけない債務になります。

ではこの実質長期債務を何年で返していくかと言うと、

半年分のキャッシュフローの純利益約5000億円と減価償却の約9000億円を合計した約1兆5000億円をキャッシュフローで返していくことになります。

実質長期債務(20兆8000億)÷返済資源(1兆5000億)=13.77年(15年以内は正常先)なのでソフトバンクは半年ベースで考えても15年以内で返せます。

そのためこの会社は要注意先と考えにくいことが今の段階では言えます。

しかし先程もお話ししたように借入の返済がかなりあります。

2019年3月期は1年間で約7兆円の借入の返済がありました。

借入金の返済を考えるともっと利益をあげないといけません。

今回の半年間だけで約3兆5000億円の有利子負債を返済している中で1兆5000億円しか実質儲かっていません。

ソフトバンクは半年間で2兆円ほどお金が足りなかったのです。

そのため銀行からの支援が必要な会社というのは事実です。

今後のソフトバンクはもっともっと儲けていかないといけない課題があることが1つと

私の考えでは意外と地味なところでつまづくのではいかと考えています。

その理由は納税(法人税)の問題です。

それを銀行と税理士と私で調整を行っていますが、この会社も同じような現象が出てくると思います。

税金を支払う能力のことを担税力と言います。

ソフトバンクの実際の担税力は今のところ未知数だと思います。

現段階では1兆5000億円ほどキャッシュフローを生み出していますが税金を納めていかないといけないとなると今よりもさらに稼がないといけないです。

今後、税金を納めた上で借入金を返していくことで年数が長くなりますので今までの資産を財務リストラで売って借入を返して新しい投資を起こしてより儲けていくような方向性になると思いますのでこれからも注視していきたいと思います。

 

 

 
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