三越伊勢丹HD 決算解説 黒字企業リストラの経営戦略 キャッシュリッチへの道のり
皆さんこんにちは喜創産業山本将司です。
今回は三越伊勢丹ホールディングスについてお話します。
三越伊勢丹HDは2017年からリストラを結構行っています。
最近では黒字企業で大企業ほどリストラを敢行しています。
リクシルさんや朝日新聞さんなどはお金を確保しているうちにどんどんリストラを行っています。
リストラをする理由は現金を確保していく必要があるからです。
なぜ必要なのかと言うと、不況が来ることを想定しているからです。
この企業は色々なところで現金を確保するという行動に出ていますので一緒に検証していきたいと思います。
今回は主に3つのテーマに分けて説明します。
景気がいいときにリストラをするメリットと背景
昔は大きい不況が来たときにリストラをしていました。
最近は黒字で勢いがあるうちにどんどんリストラしていく傾向にあります。
早いうちにリストラをすることで3つのメリットと背景があげられます。
(1)退職者が職を探しやすい
景気がいいときにリストラをすることで、リストラされた人の次の転職先が見つけやすいです。
景気がいいときに人を探している企業は多いです。
(2)先行き不安に迅速対応
景気がいいときと悪いときの周期がほぼ読めているので、そろそろ不景気が来そうだなとどこの企業も分かっています。
不景気が来たときに対処するとやりようがないので不景気が来る前に不況に強い決算書作りをしないといけません。
(3)一過性の赤字
三越伊勢丹ホールディングスは67億円の特別損失を計上する予定にあると言われております。
一般的に赤字は悪い事と思われていますが、67億円の赤字は先行投資というかたちで見ています。
一過性と考えているので、次は黒字が出ると思われているので銀行としては67億円をキャッシュの部分に入れてしまいます。
三越伊勢丹HDの決算解説
三越伊勢丹ホールディングスの決算は3月決算です。
この会社が危ないか危なくないかを判断するには2つの基準があります。
(1)実質長期債務償還年数15年以内に収まるか
規定の年数で借入が返済できるかどうかですが、三越伊勢丹ホールディングスの固定資産が9727億円で自己資本が5763億円あります。
この会社の実質長期債務は3964億円になります。
(固定資産-自己資本=実質長期債務)
これをキャッシュフローで何年で返済するのか
当期利益が78億円に対して減価償却が217億円があります。
今回は特別損失で上げられている科目が2つあります。
店舗を閉鎖したときの損失が14億円と事業構造改善費用(リストラなど)に伴う損失が87億円あります。
4つの科目を合計すると396億円あるということになります。
三越伊勢丹は現時点で9ヶ月経過していますのでこのままの同水準で決算を迎えると考えたら1年間の予想キャッシュフローは528億円あると想定されます。
実質長期債務3694億円をキャッシュフローで割ると、実質長期債務償還年数が7.5年になります。
7.5年がいいか悪いかの基準ですが、私の判断でいくと百貨店という業種では割と短いかなと思います。
都心の一等地に大きな建物を設けて、そこに集まってくるテナントに対する賃料で借金を返済していることを考えると固定資産は本来大きいものであって、返していける収益力がかなりあると思います。
(2)資金ショートするか
資金がショートするかですが、三越伊勢丹ホールディングスの第3クオーター終了時点の現預金の金額は746億円あります。
販管費及び一般管理費を月で割り算した時に3ヶ月分ぐらいあれば、安全水準と言われています。
現時点での販管費及び一般管理費の合計が9ヶ月で2323億円あります。
ということは1ヶ月258億円円あることになります。
(2323億円÷9ヶ月≒258億円)
先ほどの746億円を258億円で割ると2.89ヶ月で高水準になります。
なぜ私が高水準と思っているかと言うと前年同期比が危険水域と言った心もとない水準になりました。
前年同期比が473億円しかなかったです。
販管費にほぼ変わりはなく、大体1.78ヶ月の水準がほぼ1ヶ月分くらい上乗せ出来たところが会社の大きな成果になった思います。
今回、リストラをして利益が出てきたからキャッシュが上がった話だけではないです。
会社がどのようにしてキャッシュを残したかが問題です。
資金収支の是正は、本来もらわないといけない売掛金を早く回収したり、支払うべきお金をなるべく長期化することによってお金を手元に残す方法を貸借対照表で見るとすぐ分かります。
三越伊勢丹ホールディングスがクレジットカードで決済した売掛金が152億円も増加しています。
152億円も貰わないといけないものが貰えていない勘定に上がります。
三越伊勢丹ホールディングスがどのように対応したかというと、買掛金を長期債務に持っていっているんです。
支払い債務の増加で236億円を増やしました。
本来払うべき相手に支払いを待ってもらい長期化させました。
支払債務の増加236億円から売掛債権の増加分152億円引くと84億円になります。
三越伊勢丹ホールディングスは84億円を立て替えることを上手く長期化したことになります。
よって、84億円も現金を残したということになります。
現預金の増加分が前年同期比で273億円あったうちの84億円を立て替える部分が資金収支の是正をしたことにより、キャッシュを残しました。
私が経営改善の現場で目にする問題は、黒字なのにキャッシュが残っていないことです。
大半の会社が資金収支の是正を行っていないからキャッシュが残らないです。
そのため1回キャッシュがどのくらい残っているかを考える時に1回支払サイトを見て、現金の入と出の一覧を立てて、私のような資金調達コンサルにご相談されると色々な問題が出てくるはずなので、解決方法を一緒に探せると思います。
今後の傾向と対策
大企業のやり方を中小零細企業も出来るところはどんどん真似した方が効率的に企業が大きくなる方法があります。
私も自分で学んで色々な会社さんに指導しています。
主に3つのことが言えます。
(1)不況は大きなチャンス
不況時の緊急対策融資制度は要チェックしておいた方がいいです。
セーフティネット制度の拡充であるとか、最近ではコロナウイルスとかで貿易や通販を仕事にしている人は結構大変な時期だと思います。
仕入が出来ないので融資制度や政策公庫が積極的に支援してくると思いますし、不況でもたない会社の中から良いところを見つけてチェリーピック(いいところだけを抜く)して譲渡させることも出来ます。
そのため不況になればなるほど色々チャンスが出てくる場合もあるということです。
(2)キャッシュを固める
キャッシュを固めている間にどんどんリストラしていく。
リストラはある意味投資に近いです。
新しく儲かる事業があれば率先して人を使って仕事をさせますが、日本の経済はそこまで成熟していないので変に現金を持っておくよりかは現金のあるうちにリストラをすることも大事ですし、資金収支の是正をしていくことによりキャッシュを残せるようになると思います。
赤字企業で減価償却が大きい会社で資金収支の是正をすればきちんとキャッシュが残る会社は増えてくると思います。
(3)省力化
ある意味ダイエットと同じで強い信念がいります。
大きな構造改革をしようと思うとこんな会社にしたい!という信念がないといけないです。
そのため私のようなコンサルであるとかペースメーカーが必要になると思います。
さいごに
前回と今回の不況の違いは日本の産業の構造自体が不況を招いているので単純に資金を打てば景気が良くなるとか投資の機会が増える話ではないです。
そんな時こそ色々なビジネスチャンスが出てくるので今しっかり勉強しておくことが非常に大事ですし、コンサルタントの需要も非常に上がってくると思います。
次回は正しいコンサルタントの選び方についてお話します。
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